瑪瑙の金魚で思い出すのは、 内田百閒 ("Hyakken Uchida" 1889~1971)の短い五つの物語からなる 「青炎抄」という小説のなかの「二本榎」という話。 男が、布団の中で眠っている(といっても目は醒ましている)友人の枕元で、 つい今しがた犯してきたとある家族殺しを滔々と語り終えると、 突如友人の眠る寝床に足から這入って来て 片手で胴を抱きしめ、押しつけた口の中で別れを告げると 梯子段をすたすたと降りて夜明けの外(おもて)に去ってゆく。 この小説の中に瑪瑙の金魚が登場します。布団の中で身動きもできず、 握りしめた掌の中でぬくもった拇指(おやゆび)ほどの大きさの金魚は きっとこれよりも紅色の濃い、真っ赤な瑪瑙で彫られた金魚のような気がします。 帯締めの色を替えるだけでこんなに印象が違う~。 わたしのはまだまだ「着物あそび」の域を出ないけれど、 こうして並べて眺めているだけで、着物がほんとに楽しいです。 金魚は、随分昔に香港に行ったときに翡翠市で買ったもの。 ジャスト・”ただの”瑪瑙の金魚でしたが、三分紐も通る小さな帯留め用の金具を 見つけたので、このたび目出度く「ただの瑪瑙の金魚」から「帯留め」という役割を持った ものに生まれ変わりました(笑)。 この金具、少し買い溜めたので、 他にも帯留めになりそうな小さなモノはねが~~!と、ついつい なまはげ化してしまいます。 あいかわらず出掛けられないので、 単(ひとえ)の着物にこんな帯留めを付けて逍遙したくなる 昨年の今頃の日本庭園のシャシンを眺めてなぐさめとします(泣) ☆ (追記) ついさっき買い物に出たとき、お寺の境内に咲いていた赤い赤いさつき。 夏のような陽射しの下で、あまりにも真っ赤に咲いていて 圧倒されてしまいました。こちらは、瑪瑙というよりは 真っ赤な生きた金魚がたくさん犇めいているかのよう。 ☆
by junekite
| 2012-05-05 10:50
| 日々帖
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